はじめまして、旅する保険プロです。
「がんの最先端治療(重粒子線や陽子線など)は、国の保険がきかないので300万円もかかります。でも、月たった100円前後の『先進医療特約』をつけておけば、数千万円まで保険会社が全額払ってくれますよ!」
医療保険に入るとき、営業マンからこんな風に熱弁されて、断る理由が見当たらずに特約をプラスした方は非常に多いはずです。確かに、わずか100円で300万円の治療費がカバーできるなら、これほどコストパフォーマンスの良いお守りはありません。
しかし、ここにパンフレットの綺麗事だけを信じた契約者が、いざ大病を患ったときに医療の現実を突きつけられて愕然とする「隠されたコスト」の罠があります。
「治療費はタダになったのに、なぜか貯金が底をつきそうだ…」と、治療の途中で頭を抱えることのないように、現場のリアルをお話しします。
■ 治療を受けられる大病院は、全国に数箇所しかない
先進医療特約の最大の盲点は、お金の前に「場所」の問題があるという点です。
実は、最先端のがん治療である重粒子線治療や陽子線治療を受けられる病院は、日本全国を見渡しても、現時点でわずか数十箇所しかありません。大都市圏の一部や、地方の限られた大学病院などにしか存在しないのです。
これが何を意味するか分かりますか?
もしあなたやご家族ががんに罹り、「先進医療を受けよう」となったとき、多くの場合は「遠方の見知らぬ土地の病院へ、何週間も(場合によっては数ヶ月間)通院または入院しなければならない」という過酷な現実が待っているのです。
■ 患者と家族を追い詰める「見えないトリプルコスト」
技術料の300万円は、特約のおかげで保険会社から全額支払われます。しかし、そこへ行くために発生する以下の「莫大な実費」が、あなたの財布に重くのしかかります。
1. 遠方への往復の交通費(新幹線や飛行機代、何度も往来すれば数十万円に)
2. 長期間の滞在費(通院治療の場合、近くのホテルやウィークリーマンションを数週間〜数ヶ月借りる費用)
3. 家族の付き添い費用(看病のために同行する家族の交通費や宿泊費、食費)
これが、営業マンが絶対に語らない先進医療の現場のリアルです。治療のために仕事を休まざるを得なくなれば、収入そのものも減ってしまいます。これでは、いくら治療費の300万円が免除されても、日々の生活費の持ち出しで、気づけば数十万円の貯金が一瞬で吹き飛んでしまうのです。
■ 「一時金が出る最新の保険」の落とし穴
こうした現実を受けて、最近の医療保険では「先進医療を受けたら、技術料とは別に一律10万円〜20万円の一時金(または交通費の実費)を支給します」という手厚い特約をアピールする営業マンも増えました。
一見すると親切な改定ですが、ここに新たな油断が生まれます。
さきほどお話しした通り、数ヶ月に及ぶ遠方でのホテル代や、家族が仕事を休んで付き添うためのコストを計算すると、「一時金の10万〜20万円程度では、結局まったく足りない」というのが実務の冷徹な現実です。
「一時金が出るプランに入ったから、遠方の治療になっても貯金ゼロで大丈夫!」と勘違いさせてしまう営業マンの罪は重いと言わざるを得ません。
■ 「特約があるから全額安心」という思考停止からの引き算
私は「先進医療特約は無駄だから外せ」と言いたいわけではありません。月100円前後で大きな安心を買えるなら、つけておく価値は十分にあります。
本当に危険なのは、営業マンの言葉を鵜呑みにして、「万が一のときに、今すぐ動かせる手元の現金(貯金)」をないがしろにしてしまうことです。
どれだけ手厚い保険や一時金の特約を足し算していっても、遠くの病院へ行くための新幹線代や、明日のホテル代を、保険会社がその場で代わりに払ってくれるわけではありません。
必要な保障は特約で賢く最小限に抑えつつ、営業マンの甘い言葉に惑わされず、「いざという時に自分と家族が身軽に動けるための現金」をしっかり手元に残しておくこと。このリアルな引き算の視点こそが、大病を患ったときにあなたの生活を本当の意味で救う盾になります。

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