はじめまして、旅する保険プロです。
「車のバンパーをうっかり電柱にこすってしまい、修理代が10万円と言われました。でも、せっかく毎月高いお金を出して車両保険に入っているんだから、保険で直さなきゃ損ですよね?」
現場で30年、お客様からこのようなご相談をいただくことが本当に多くあります。
高い保険料を払っているのだから、いざという時は1円でも多く使わなきゃもったいない。そう考えるのはごく自然なことです。
しかし、ここには現在の自動車保険の仕組みにおける「最大の罠」があります。
結論から言うと、「10万円の修理代を保険でまかなった結果、翌年からの保険料がトータルで15万円以上値上がりして大赤字になる」という落とし穴が、自動車保険のルールには隠されているのです。
今日は、ちょっとした自損事故で保険を使って後悔しないための、プロが現場で必ずやっている「損得勘定の計算式」をお話しします。
■ 保険を使うと「3年間」ペナルティが続く仕組み
なぜ、せっかくの保険なのに使うと損をしてしまうケースがあるのでしょうか。
理由は、平成24年(2012年)に自動車保険のルールが大きく変わり、「事故有係数(じこありけいすう)」という仕組みが導入されたからです。
(※ここからの話は、一般的な「1年更新」の契約をベースにお話しします)
昔の自動車保険であれば、「事故で保険を使ったら、翌年の等級が下がって保険料が少し高くなる」というシンプルなものでした。しかし今のルールでは、電柱にぶつけるような自損事故(3等級ダウン事故)で安易に「保険を使います」と請求してしまうと、以下の二重のペナルティが課せられます。
1. 翌年から等級が「3つ」下がる
2. 翌年から3年間、同じ等級の人よりも保険料が大幅に高くなる「事故有」という割引率が適用される
つまり、たった1回保険を請求してしまっただけで、あなたは向こう3年間、通常よりもはるかに高い「ペナルティ料金」を保険会社に払い続けなければならなくなるのです。
■ 10万円の修理で15万円払う?プロの計算式
では、実際にどれくらい損をするのか、実務でよくある具体例で計算してみましょう。
例えば、現在「15等級」で、年間の保険料が8万円の方が、10万円の修理のために車両保険を使ったとします。
もし保険を使わなければ、翌年は「16等級」になり、保険料はさらに安くなります。
しかし、10万円のために保険を使ってしまうと、翌年は「12等級(事故有)」へと一気に転落します。
ここから3年間で跳ね上がる保険料の合計額(本来無事故なら安くなっていた分との差額)を計算すると、条件によっては修理代を上回るほどの保険料が増えてしまうケースもあるのです。
・保険から支払われた修理代:+10万円
・3年間で増える保険料:ー15万円
・トータルの損益:5万円の大赤字!
「保険で直せてラッキー!」と思って手続きを進めた数ヶ月後、翌年の更新案内を見て「えっ、こんなに保険料が上がるの!?」と目玉が飛び出るほど驚いても、一度使ってしまった保険はもう後戻りできません。ネットや相談相手のいない窓口で手続きをしてしまい、後からこの事実に気づいて後悔される方は本当に後を絶たないのです。
■ プロが現場で引く「損益分岐点」のライン
だからこそ、私たちプロの代理店がお客様から「車をこすっちゃった、事故を起こした」と連絡をいただいたとき、もちろん何よりも最優先で迅速な事故処理や初期対応をすぐに進めます。
しかし、ただ手続きを右から左へ流すだけではありません。その対応の段階で、まずは「今回の修理金額によっては、あえて保険を使用しない方がトータルで得になる場合もありますよ」という選択肢をあらかじめお伝えします。
その上で、お客様の現在の等級内容などをもとに「もし今回の事故で保険を使うと、概算ですが翌年からこれくらい保険料が上がります」というシミュレーションを先んじて丁寧にお伝えしておくのです。
そして最終的に、工場から「修理金額が確定した」という連絡が入ったタイミングで、事前に出しておいたシミュレーションと天秤にかけ、「今回の金額なら、保険は使わずに自腹で直した方がトータルで得ですよ」「今回は金額が大きいので保険を使いましょう」という確実なアドバイスをお伝えします。
事故の連絡をいただくたびに、この裏でのシミュレーションを行って、お客様が最終的な決断で損をしないよう、最初から最後まで徹底的に並走するのです。
無駄な保険料は限界まで削る。けれど、いざという時の判断を間違えて、余計なペナルティを保険会社に払い続けることほどもったいないことはありません。
■ 困ったときに「計算」してくれる味方を持つ
今の自動車保険は、ネット通販などで簡単に安く入れる時代になりました。しかし、こうした自損事故を起こしてパニックになっているとき、画面の向こうの通販型保険は「保険を使いますか?使いませんか?決めるのはあなたです」としか言ってくれません。
本当の安心とは、安さだけを競うことではなく、トラブルが起きたまさにその瞬間に「今回の修理代なら、保険を使わない方がトータルで5万円得ですよ」と、プロの計算式で引き算のジャッジをしてくれる味方が隣にいることです。
トラブルが起きたとき、あなたの隣には、親身になってくれる担当者がいますか?

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