はじめまして、旅する保険プロです。
みなさんは「火災保険」という名前を見て、「火事のときにしか使えない保険」だと思っていませんか?
実は、火災保険の本当のすごさは、火事だけでなく「台風、大雨、大雪、雹(ひょう)」といった自然災害による建物のダメージも幅広くカバーしてくれる点にあります。
大きな台風が去ったあと、よくインターネットやチラシなどで「実は家の傷の9割が請求漏れ!火災保険で直せます」といった大げさな文句を見かけることがあります。
30年現場にいるプロとして、この「請求漏れ」の本当の現実と、その裏に潜む「最悪の罠」について、分かりやすくお話しさせてください。
■ なぜ「請求漏れ」が起きるのか?
確かに、台風のあとに「雨どいが歪んだ」「瓦が少し浮いている」といった実害が出ているにもかかわらず、そのまま放置されているケースは現場でもよく見かけます。
これはお客様が「火災保険が使えるなんて知らなかった」ということもありますが、それ以上に、私たち保険代理店が日頃からお客様に対して、その仕組みをきちんとお伝えできていない責任もあるのではないかと、私自身も深く反省させられる部分です。
しかし同時に、巷で言われている「9割」という数字には少し別のカラクリもあります。
それは、台風とは関係のない「ただの経年劣化の傷」まで強引に自然災害のせいにして、「これも請求漏れですよ!」と煽ってくる悪徳なリフォーム業者や申請代行会社が、数字を大きく見せているという側面があるのです。
台風直後にどこからともなく現れる「火災保険を使えば、実質無料で家を修理できますよ」という甘い言葉には、本当に注意しなければなりません。
■ 豹変する悪徳業者。本当に多発しているトラブルの数々
彼らは一見、とても親切に思えます。「面倒な保険会社への申請も、私たちが代わりにやりますから」と言って、勝手に高額な修理見積もりを作り、保険会社に申請させようとします。
しかし、彼らが作る見積もりは、古くなって傷んだだけの箇所まで自然災害のせいにして作られた、無理のある内容であることがほとんどです。当然、保険会社の調査員(損害鑑定人)もプロですから、現場を見ればそれが「風でついた傷」なのか「ただ古くなってついた傷」なのかはすぐに見抜きます。
結果として、保険金が一部しか降りなかったり、1円も降りなかったりしたとき、悪徳業者はどうするか。
「もう契約して資材を手配してしまったので、高い違約金を払ってください」
「降りなかった分は、ご自身の自己負担でそのまま工事してください」
と、手のひらを返したように高額な請求を突きつけてくるのです。
これは国民生活センターなどにも毎年数千件の相談が寄せられている、本当に実在する深刻なトラブルです。親切な味方のフリをして、地方の高齢者や知識のない方をカモにしようとする業者が後を絶ちません。
■ 正しいプロは「引き算」でアドバイスをくれる
私が古い組織を飛び出し、一兵卒としてお客様の前に立ち続けているのは、こうした業界の歪みから、真面目なお客様を守りたいからです。私を信頼してついてきてくださったお客様には、いつもこのようにアドバイスしています。
「台風のあとに外壁や屋根が心配なら、まずは見知らぬ業者を家にあげず、信頼できるプロに一度相談してくださいね」
本物のプロは、不安を煽って無理に高い工事を勧めたり、保険会社を騙すような申請をさせたりはしません。
「この傷は確かに台風の可能性が高いから、正当に申請しましょう」「でも、こちらの凹みは経年劣化ですから、今回は申請から外しておきますね」と、法律とモラルに基づいた「引き算の精査」を優しくしてくれます。
正当な理由で、正しい手順を踏んで申請すれば、火災保険はあなたのたいせつな我が家を守る最強の味方になってくれます。決して、嘘の申請を勧める業者の片棒を担いではいけません。
■ 派手なチラシや甘い勧誘に騙されないでほしい
自然災害が増えている今の時代だからこそ、保険の仕組みを逆手に取るような悪質なビジネスが横行しています。
あなたが頼るべきは、「タダで直せる」という怪しい業者の言葉ではなく、その傷が本当に自然災害によるものかどうかを、ごまかさずにまっすぐ見極めてくれる誠実なプロの目です。
次の台風や大雨のあと、もしご自宅のことで不安になったら、どうかこの話を思い出して、まずは冷静に信頼できるパートナーに相談してくださいね。

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